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 【杉村和将】岩手県大船渡市の吉浜地区は「奇跡の集落」と呼ばれる。震災で津波の直撃を受けながら、人的被害が行方不明1人にとどまった。「決して低地に下りてはいけない」。明治と昭和の2度の大津波を教訓にした先人の教えが、今も脈々と受け継がれていた。
 大船渡市の吉浜地区は扇状地が海に向かって開け、津波の直撃を受けやすい。浜辺には防潮堤の残骸が散らばり、更地が広がる。幸いなことに、津波をかぶった場所にはだれも住んでいなかった。
 多くの住宅が並ぶのは、浜から300メートルほど離れた標高16~20メートルの県道より内陸にある高台だ。県道や国道の周辺に480世帯が点在する。その高台に居を構える木川田平三郎さん(79)は農家と漁業の「半農半漁」で暮らす。